【+1】溜め池


 <文章> 0  <体験> +1  <得点> +1


 不条理話が続く。


 田舎で人でないものと友情を結んでしまう、というパターンかと思ったらまるで
違うダークな世界が展開される。この意外性は面白い。
 不思議な巨大魚だけでも異形の存在なのに、それが幻覚だったのか別の何かだったのか
遺体へと変わってしまう。これも興味深い。


 ただ、魚の時点ではまだ死にかけだったのが遺体になると完全に死んでいるようなのは
繋がりが悪い感じだ。
 また、文章面でも特に問題はないし丁寧に書かれているのだけれど、もう一つ
引き込まれるものがない。メリハリを上手く作っていないせいか。


 さらに、 これは他の方の講評を読んでやはり、と思ったことだけれど、これまで
あちこちでいろいろな溜池を見てきたけれど透明なものには出会ったことがないのは
確かだ。溜池は通常湧き水ではない上に、流れ込んできたものをそこでせき止めている、
という構造だからだろう。
 そこが天然の池とは異なる。この作品の信憑性に関わる大きな疑問点ではある。
 しかし、ないと言い切れる根拠は持たないので「還元水疑惑」レベルの問題提起に
留めておく。